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長い時間洗面所の鏡の中で笑う練習をしていたら、玄関の扉が開く音が聞こえた。 その音を聞いて、最後にもう1度鏡の中で笑ってから洗面所を出た・・・。 この屋敷の長い長い廊下・・・ その廊下を歩く・・・。 昔みたいに小走りは出来なかったけど、いつもよりは早く歩いた・・・。 そして、呼んだ。 「武蔵。」 武蔵の名前を、呼んだ。 昔よりも随分と落ち着いた声で。 それで、気付いた。 最近・・・私は武蔵の名前もほとんど呼べていなかった。 それに気付いて泣きそうになってしまった時、革靴を脱いだ武蔵がゆっくりと顔を上げた。 ゆっくりと顔を上げて・・・ 途中で、止まった・・・。 私の顔を見ることはなく、お腹らへんで止まった。 「ただいま。」 「お帰りなさい。」 いつものやり取りの後、2人で長い長い廊下を歩く。 「今日、真坂さんと飲んできた。」 「うん、聞いてる。」 「だから夜食はいらないから。」 「うん。」 そう言って、武蔵がリビングを通り過ぎて部屋へと歩いていく。 いつもよりも早足で歩いていく。 それに慌てて私もついていく・・・。 何て声を掛ければいいのか分からなくて、何も言えないままついていく・・・。
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