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「天野さんって本当に面白くて。」
フラフラと歩く私の隣を矢田さんがゆっくりと歩く。
そんな矢田さんに天野さんとの話をしていく。
結婚が延期されてからはほとんど話していなかったけれど、それまでは会社の後は毎日よく話していた。
愛はないけれど、仲は悪くない。
“悪くない”どころか・・・仲は良いとは思う。
「天野さん良い子ですよね。
俺も1回飲みに誘われただけですけど、それだけで良い子でした。
10歳も上の俺と本気で割り勘にしようとしてたのには笑いましたけど。」
「本当は矢田さんのことも結婚式に招待したかったらしいよ?
旦那さんが矢田さんに敵対心を抱いてるらしくて招待するのやめたんだって。」
「俺に・・・?なんでだろう。
若くて格好良い男の子だったんですよね?
透君が言ってましたけど。」
「見た目は格好良かったけど、今時の若者みたいな感じの子だったけどね。
嫉妬とかなさそうな優しそうな子で。」
「・・・今時の若者でも嫉妬とかするんじゃないですか?」
矢田さんが笑いながらそう言ってきた。
ここ1年は雑談もしていなかったので久しぶりにこんな会話をする。
「私も31歳だしね、最近の若者のことはよく分からない。」
「それを言ったら俺の方がよく分かりませんよ。」
「でも研究室の竹之内君と米倉さんとも仲良く出来てるね?」
「仲良くというか・・・どちらかというと俺のお世話をしてくれていて。」
「矢田さん生活力ないからね。」
「おっしゃる通りです。」
「お皿とかよく落としちゃうんだって?
私はそんなの見たことないけど。」
私が聞くと矢田さんは少しだけ無言になり・・・
「少し考え事をしていると、たまに。」
「何かに集中してる時でもそんなの見たことなかったけどね?」
「そうなんですよね・・・。
でも今日は久しぶりに大丈夫で。
久しぶりに・・・」
矢田さんが言葉を切り、フラフラと歩く私を見下ろした。
「久しぶりに、大丈夫でした。
昨日幸せな夢を見たからかもしれません。
小町さんに“良い夢を”と言ったら、自分も幸せな夢を見られました。」
そんなことを心底幸せそうな顔で言ってきた。
それほど幸せな夢を見たらしい。
「私も昨日・・・幸せな夢を見た。」
「そうですか・・・。」
「うん・・・。」
どんな夢かを聞かれたら困るから、矢田さんの夢は聞かなかった。
矢田さんも私の懐には入ってこなかったので、私から言うこともなかったことにホッとした。
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