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定時になり、私なりにまとめているノートに細かくメモを書いていく。 データとして打ち込むよりも、何だかんだ手書きで書いた方が頭の中には入るし整理もされていく。 専門用語の多い部署。 その場でメモをした文字をパソコンで調べ、ノートに書き出していく。 23歳の年に入社をし研究室に配属されたのは初めてだった。 私にはこっちの頭がないのは父親も分かっているから配属させないのかと思っていたら、今になって配属をさせた。 “覚悟が足りていない” 父親の言葉を思い出す。 加賀社長の一人娘であるという自覚はある。 それなりに努力はしている。 “それなりに”だけど、私なりに頑張ってはいる。 でも、どうしても悲しい。 どうしても虚しい。 好きではない人と結婚なんて、しない。 好きではない人と結婚なんて普通はしない。 そんなことをしないといけないなら、私はいらなかった。 “加賀社長の一人娘”なんていらなかった。 結婚は好きな人とするもの。 愛した人とするもの。 私には、好きな人がいた。 18歳の頃から好きな人がいた。 会いたくて・・・ 会いたくて・・・ 二十歳の時に会えなくなってしまった・・・。 婚約が決まってから会えなくなってしまった・・・。 会いたい・・・。 会いたい・・・。 会い・・・たい・・・。 右手に持つボールペンに力が入らなくなってくる。 夜はほとんど眠れていないからか、お昼休みと定時後はこうして短時間眠ってしまう・・・。 眠りたくなんてないのに、眠ってしまう・・・。 眠ってしまう・・・。 私は眠い・・・。 私はずっと、眠い・・・。 ───────── ─────── ...*...*...・*.・*....
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