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最寄駅にはすでにお母さんが来ていた。
本当に田んぼと山しかなくて、都会育ちの二人はあたりをキョロキョロ眺めている。
近くに観光案内の地図があって、あとこのさき〇km先と書いてあるレストランや温泉の看板があるだけ。
「お母さん!」
駅前に車がとまっていて私はノックをした。運転席のお母さんはスマホをいじっていたけど、手を止めて私に視線を向けた。
「荷物、後ろにおきましょ」
トランクをあけて持ってきた荷物を入れる。それからわたしは助手席、優衣ちゃんと小春ちゃんが後部座席に座って挨拶をした。
「若葉がいつもお世話になってます」
「槇小春です、去年クラスが同じでした。3日間よろしくお願いします」
お上品な対応に、素敵な微笑みがプラスされてる。
「乙幡優衣です。同室なんですけど、いっつも勉強教えてもらっていてお世話になりっぱなしです。よろしくお願いします」
優衣ちゃんはいつもの可愛い満面の笑みでお母さんに自己紹介した。
「よろしくお願いします。嬉しいわ〜。全然連絡してくれないと思ったら友達連れてきてくれて……」
「だって忙しいんだもん。行事も多いし」
と言い訳してみる。お母さんは車のアクセルを踏んで走り始めた。
「若葉は副寮長で生徒会に入ってるから、忙しいよね」
「2年の代表だからね」
「そんなことはないよ」
学校のあれこれを話し、いろいろな名前が飛び交う。お母さんはほっとしたようでかなり嬉しそうに話を聞いていた。
ほんとに連絡入れなかったから、ちょっと申し訳無さを感じる。
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