俺と結婚しろ!×5

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俺と結婚しろ!×5

「今すぐ俺と結婚しろ」  突然彼にそんな馬鹿げたことを言われたのは、転職してすぐのことだった。  長年勤務していた営業事務の仕事をリストラによって失い、路頭に迷いそうなところを友人に助けてもらった六月。  梅雨真っ盛りでくせ毛の髪が膨らむ六月。  友人が妊娠を期に長期休暇に入るので、代わりに仕事を引き継いでほしいと、この会社に拾ってもらったのがそもそものキッカケだった。  仕事内容はアクセサリーの販売。  正直言って一切興味はない。  だけどそれを言ったら前職の営業事務だって全く興味はなかったので、どんな仕事でも働かせてもらえるなら幸運だった。  興味がなくてもマニュアルがあれば働ける。  興味がなくてもやる気はあるので、人一倍仕事を覚える努力をした。  だから一ヶ月そこらで店長代理くらいの業務はこなせるようになったのだけど。 「もう一度言う。俺と結婚しろ」  まさかこのアクセサリーブランドの会社社長にプロポーズされるなんて、誰が予測できただろうか。      
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