小川春

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小川春

 世界にあるほとんどのものに、嫌悪感を覚えるか関心が持てない。そして僕は、残されたごく限られたものにだけ、偏執的な愛を注ぐ。他人が見れば十分に愛する価値があっても、がらくたを放り込むように箱の中にしまうか、捨ててしまう。  例えば高校二年生の夏のことだ。裸にしてきた女の数が百人を超えた。しかし僕が愛したのはセックスだけで、彼女たちには興味すら持てなかった。嫌悪ですらない。無関心だったんだ。  ちょうどその頃に、僕が所有しているサングラスの数も百個を超えた。結局、愛され、磨かれたサングラスは二個だけだ。それ以外は手に入れただけで興味がなくなった。 そしてセックスが終わると煙草に火を着け、何も言葉を発さない僕を涙目で見ていた女も二人だった。彼女たちには愛される価値があるのかもしれない。ただ僕には興味が持てなかった。サングラス以下だったというと、僕の人格が理解できるだろう。 友達のヒカルには、「人間のクズ」だと言われた。確かにそうかもしれない。しかし弁解させてほしい。僕も今までに、二十五歳までに一人だけ女を愛したことがある。 彼女の話がしたい。できる限り美しく、夢のように。だから僕は沢山の嘘をつく。全ての話が嘘かもしれないし、でたらめは些細なことかもしれない。とにかく、この話は砂の城だ。 絶望の中で自分が作った美にしかすがりつくものがないから、僕は嘘をつく。
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