第一話:雨の日の横顔

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 確かに孤立(こりつ)しているよなあと思う。実際、マトモに誰かといる所を見たことがない。  ただ仮にも進学校において、陰口(かげぐち)以上の事をされているとも思えなかった。  最初の頃は気にかけていた同級生も、何人か居たようだ。しかし彼女があまりにも心ここにあらずなため、最終的に腫れ物扱いになってしまった、と言うのが本当の所だった。 「かまってちゃんアピのメンヘラ」  直接誰かが言った訳ではないが、それが学年中の共通認識になっていた。  落窪(おちくぼ)んだ目、不健康に痩せた体……包帯を今日はしてないのか。それでも腕の赤くひきつれた傷跡(きずあと)は、少しでも注視(ちゅうし)すればすぐにでもいくつか見つけることが出来るだろう。  なんとなく見ていられなくなったゼンジは、(かばん)からスポーツタオルを取り出すと(あや)に向かって投げた。  飛んできたタオルにビクッとして後ずさった彼女の足元が、完全に水溜(みずた)まりに()かる。 「それやるよ。返さないでいいから」 「――……」  無反応かよ。ま、反応があったら逆に怖いか。  ゼンジには自分が話し下手だという自覚があった。だからと言って、似たように話をしない彼女へ共感を覚えたいとも思わなかった。ザーザーと降りしきる雨の中を、再び歩き出してゆく。  校門に到着したゼンジは、傘を持ち上げて校舎を見上げた。空は朝からどんよりとした暗さで、どの教室にも照明がついている。    2階の一番端にある自分のクラスを見上げると、望月(もちづき)というクラスメイトが頬杖(ほおづえ)をつきながら、こちらを見ていた。  (あや)はタオルを握りしめながら、ゼンジの後を無言のままくっついて歩いてきていた。    そういう所が腫れ物扱いされる原因になってんじゃないのか。嫌悪感まではないけれど、関わりたいとも思えない。    ゼンジは(あや)に気づかないフリをしながら、そのまま校舎に向かって歩きだそうとした。  頬杖をついた望月(もちづき)はまんじりともせず、こちら側を眺めている。  望月(もちづき)リク  彼はもうこれ以上、自分が成長しない事を知っているかのような華奢(きゃしゃ)な体つきと、女性のように美しい整った顔立ちをした少年だった。
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