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-----遡る事、30分前-----
「ウィーッス」
朝からどんよりとした雨模様だった。望月リクは、教室にいたクラスメイトと形だけの挨拶をして、いつもの席についた。
一番後ろの窓際の席
席替えがある度に、上手いこと言い含めたり、ジュースや昼食で買収してその席を死守してきた。湿気で体がベタベタする。ただでさえ茶色い髪はこの雨のせいで、赤茶色なっていた。
教室は、時間にしては空席が目立った。リクはスマホを取り出すと電車の運行状況を調べた。青梅線が土砂崩れのため、迂回運行中。
リクは髪をかきあげると頬杖をついて、校庭を眺めだした。ホームルームが始まるまでのこの時間が、一番好きだ。
蟻の群れが、どんどん校舎に吸い込まれてゆく。
学校にいる間中、演技をしていなきゃならない。きっとこれが、普通の高校生なんだっていうのを。キャラ設定と世界観。そういった創作をリアルに持ち込む事は、リクにとっての日常だった。
正直、どいつもこいつもバカだと思う。まるで蟻そのものだ。
ただ、生きて
生殖行為をして
そして、死んでゆくんだ
アイツは今日もちゃんと学校に来てるんだろうか。
この高校で唯一の……共犯者。
監視をするために近づいた。引っ越すことになって、姓が変わった事。それからあの事件の事。アイツが気づいてるとは思えないけれども、家族や学校関係者は知ってる。噂はどこから広まるか分からない。高校であの話が蒸し返されるのは、御免被りたかった。
けれど元より監視や口止めをする必要もなかったらしい。学校では孤立していたし、何よりアイツは俺と自分を同一視していた。普通じゃない、ただそれだけの接点で。
違う、お前が受けてきたそれとは違うんだ。
あの時、俺は好きで先生に抱かれていたんだよ。
蓮波
◆
中学3年になったばかりの頃だった。新任の男性教師が、俺の初体験の相手だった。体育祭の準備にかこつけて、用具室でキスを迫ったのはこちらから。切れ長の瞳が特徴的な、長身の男だった。
口の中に先生の舌が入ってきた時、俺はこの人のモノを吸ってみたいと思った。だから、そうするみたいに先生の舌を吸ってみた。
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