第一話:雨の日の横顔

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 あれが恋とか愛だったのかって聞かれると、今でも分からなくなる。  そのうち先生は、俺を恋人みたいに扱い始めた。コンドームをつけたり、ローションを使おうとした。そういう心遣いみたいなものは要らない。優しく触られると吐き気がする。鳥肌が立って、気持ちが悪いと思ってしまう。  俺は、場末の売春婦でいたかった。  もっと痛めつけて欲しかった。そっちの方が気持ちいいから。だから手錠で縛ってもらったり、首を締めてくれってお願いするようになった。殴ってくれって言ったこともある。  先生は、嫌がっていたけれど。  痛めつけられれば痛めつけられるほど、下半身が反応して仕方なかった。射精が止まらなくなって、目の前でチカチカと電流が流れている瞬間が一番好き。  その日も用具室で散々やって、中のモノを掻き出して着替えを済ませ、外に出ようとしていた。  その時だった。  トイレの水でもぶっかけられたのか、酷い匂いをさせた蓮波(はすなみ)が入って来たのは。  蓮波(はすなみ)は、もはや中学で知らない人はいない、有名ないじめられっ子だった。家庭でも虐待されてるって噂があった。母親の頭がおかしいって言ってるやつもいた。俺は先生にそんな話を聞くほど、蓮波(はすなみ)に興味がなかった。  ポタポタと包帯から(したた)る水が、徐々に朱色(しゅいろ)に変わっていった。彼女はそれが当たり前のような顔をしていた。俺を見ても、幽霊みたいに突っ立ったまんま。  血の色と匂いが、興奮を誘う。  俺はあんだけヤった後なのに、ガチガチに勃起(ぼっき)していた。  多分、笑っていたと思う。  蓮波(はすなみ)に近寄って、乱暴に包帯を外した。そこでようやく俺の存在に気づいたみたいで、急に怯えだしたから余計に興奮した。    腕の傷痕(きずあと)を舐めながら、(あふ)れてくる血をすすり、アレをしごいた。彼女はいつの間にか無表情になっていて、俺がケツに指をツッコミ始めても、ただじっと見ているだけだった。  これが蓮波(はすなみ)と俺との出会い、そして二人の間に出来た最初の秘密だ。  しかし二回目が訪れる事はなく、間もなく俺と先生の関係は学校関係者に露呈(ろてい)した。家が金で揉み消して、全てをうやむやにした。  その後、先生は学校を辞めさせられた。
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