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episode15
9月の月末から10月上旬は上半期の決算と下半期の始まりの準備で
各職場は鬼のように忙しい。
俺も愛唯子も残業続きで一緒に夕飯すら食べられていない。
愛唯子の寝顔を見て疲れをいやしている。一緒に住んでてよかったと思う。
土日は2人ともぐったりとして、翌週に向けての充電期間になっている。
愛唯子を抱きたい気持ちはあるが、限度が分からない俺は愛唯子を抱きつぶす
自信しかないので、愛唯子を抱きしめることとキスするだけにしている。
家事は週末に一緒に洗濯や掃除をしている。食事も週末は一緒に作るが
平日は外で食べたり総菜買うことにした。
香坂は忙しということで、俺だけでなく亮二や他の人のフォローにも
入っているためあまり絡んでいない。
帰りも俺の方が遅いから遭遇することはない。
今週を乗り切れば・・・愛唯子といちゃいちゃしまくることを糧に日々
頑張っている。
翼から何度か愛唯子たちと香坂がエントランスで遭遇することがあったが
今のところ特に何もなかったと連絡をもらっている。
俺の取り越し苦労だったのか・・・・。
仕事が終わった!!
今日は愛唯子も早く帰れるっていってたから一緒に帰ることにしている。
部長が急に慰労会をしようといいだしたが、今日は早く家に帰りたいと
全員がいい。次回に持ち越しとなった。
亮二と一緒にエントランスにあるカフェスペースで愛唯子を待っていた。
「遠矢先輩。坂上さん。お疲れ様です。私もご一緒していいですか?」
香坂が俺と亮二に声を掛ける。
「待ち合わせしてるだけだから。」
「冷たいですー。私が告白したから気まずいですか?でもそれって私の事を
気にかけてるってことですよね」
香坂の言葉に亮二と顔を見合した。
「気まずくはないよ。仕事以外では絡んで欲しくないし」
エレベーターから愛唯子と小泉と翼が出てきた。亮二も分かったみたいで
席を立って愛唯子たちの方へ向かっていった。
「もう行くから。お疲れ」
香坂を見ることなく俺もみんなの元へ向かった。
俺は愛唯子の隣に立ち、5人で会社の外に出ようとしたところ、
俺のカバンを持っていない方の腕をぎゅっとつかまれた。
何が起こった?と思うと俺の腕をつかんだのは香坂だった。
「香坂さん、なんなんだよ。腕を話してくれ」
「遠矢先輩が私に冷たくするからですよ。そんなに心の狭い彼女さんなんですか?」
と愛唯子に視線を向けた。
「遠矢先輩の彼女の新藤さんですよね?私、遠矢先輩に大学の時もこの前も振られちゃったんですよ。でも大学の時は彼女にはしてくれなかったけどエッチしてくれたんです。だから今回も遠矢先輩とエッチさせてもらってもいいですか?遠矢先輩のエッチが忘れられないんです私。」
その場の空気が凍り付いた。周囲には人がいなかったものの愛唯子の顔色は
とても悪くなっていた。
「香坂、お前何言ってるんだよ!」
俺は香坂の手をおもいきり振り払った。
「俺と彼女は結婚するんだ。過去の事は否定できないが、今は彼女意外とはそういう事はしない。」
香坂は愛唯子の手をつかんだ。
「遠矢先輩のエッチっていいですよね?無理矢理されるのがまた
犯されてるみたいで感じちゃいますよね」
香坂はニヤニヤしながら愛唯子に向かってい言い放つ。
「やめろ!」
愛唯子が膝から崩れそうになるのが分かりすぐに愛唯子を支えた。
翼と小泉が愛唯子を連れてカフェスペースに移動させた。
亮二はこの場に残ってくれている。
「香坂さん、君は何がしたいんだ」
「私は、遠矢先輩が欲しいんです。でも彼女にはしてくれないっていうから
抱いてくださいって言っているだけですよ?彼女さんに迷惑かけてないですよ
ね」
「この状態をみて分からないの?迷惑かかってるだろう。」
「こんなことで壊れるんだったら、遠矢先輩の彼女になんかなるんじゃないって話ですよ。遠矢先輩は女の人が放っておかないんだからこれからだって
こういう事ありますよ」
俺はなんとも怒りがこみあげて押さえられず、香坂の胸倉をつかんだ。
「廉!」
亮二に止められるが手を離せない。
香坂は俺の手を両手で握り、ニコリと笑う。
「私の事を抱くだけでいいんですよ?それだけで幸せに結婚できるのに」
この女は狂ってる。俺は香坂を突き飛ばした。
「これ以上、怒らせるな。」
愛唯子の元に走り寄り、そっと抱きしめた。
翼がタクシーを呼んでくれていたから、タクシーに乗ってマンション帰る。
愛唯子は動くことが出来ず、俺は愛唯子を抱き上げて部屋へ入った。
ソファーに愛唯子を座らせて、隣に座る。
「愛唯子・・・大丈夫か?」
「うん・・・あの人が言っていたこと・・・」
「ごめん。」
「私に嘘ついたの?」
「言ったら愛唯子を傷つけると思って言えなかった・・・」
「言って欲しかったよ・・・」
愛唯子が俺を抱きしめて号泣する。
「ごめん。愛唯子。ごめん。」
俺は愛唯子が泣き止むまでずっと側にいた。
愛唯子が少し落ち着いた。
「あの人って大学の時から廉の事がずっとすきだったんだね。」
「大学の時は告られても誰とも付き合う事はなかったし・・・」
「でも・・・」
愛唯子の言いたいことは分っている。
「あとくされのない女と体だけの関係はあった・・・。あの時は、欲を
吐ければよかったんだ・・・・」
「廉のエッチが忘れられないって言ってたね・・・」
愛唯子が悲しそうな顔をしている。
俺は愛唯子を抱きしめる。
「俺は、愛唯子を抱いた時に初めて体も心も温かくて気持ちいいって思えた。
今までのは何だったんだろうって・・・。」
「私も、廉とすると痛くなかったし温かい気持ちにいつもなってる・・・」
愛唯子に嫌な思いをさせてしまった。こんな俺とはいたくないだろうな。
「俺。翼か亮二の所に泊めてもらうわ。俺と一緒にいたくないだろ・・・」
「れ・・ん・・」
「嫌な思いさせてごめんな。こういう事これからもあるかもしれないよな・・・。結婚する前でよかったよな・・・」
本当はこんなこと言いたくない。でも愛唯子にこれ以上悲しい思いはさせたく
ない。
「愛唯子・・・俺と結婚・・・嫌になっただろ・・・」
これ以上、声を出したら泣いてしまいそうだ。自分が悪いのに・・・・。
「愛唯子も小泉呼んでもいいからさ・・・俺、行くわ・・・」
愛唯子の顔を見る事が出来ず、玄関に向かった。
外に出ようとした時、後ろから抱きしめられた。
「愛唯子?」
「なんで、勝手に決めちゃうの?私、廉と一緒にいたくないっていった?
廉は私と一緒にいたくないの?結婚したくなくなったの?」
「そんなことない!俺は愛唯子とずっと一緒にいたい。でも・・・」
愛唯子は俺の背中おでこを付けた。
「私も廉と一緒にいたいと思うよ。さっきはあの人が怖くてあんな風に
なってしまってごめんね。私があの人にちゃんと言えばよかったのに・・・。
私、大丈夫だから・・・だから私の隣からいなくならないで・・・廉・・・」
俺は振り返って愛唯子を思い切り抱きしめた。涙がこぼれて止まらない。
「愛唯子・・・ごめんな。こんな俺を好きになってくれてありがとう」
俺と愛唯子は2人で泣きながらしばらく抱き合っていた。
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