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夜に待ち合わせて、俺は直人を居酒屋に連れていった。あいつはザルで、しかも遠慮って言葉を知らなかったようで、俺の諭吉は軽く吹っ飛んでいった。まあいいさ。これは五年前に連れてけなかった、あのファミレス代も兼ねてんだから。雪をざくざくと踏みしだいて、あいつをタクシーに押しこんだ(運転手に渡した諭吉が最後の一枚だ)。薄墨色の空に雪が舞い散って、ひと足早い桜のようだった。俺は川沿いを歩きながら、カイロを入れたポケットに手を突っこんだ。
◆
編集長は初めて俺の記事を褒めてくれた。直人の了承をもらって、あの絵の経緯を記事に加えた。俺はいま電車に乗って、年明けに提出する企画を考えている。最近はなんか、仕事が楽しい。帰省したら、押し入れの奥から画材を引っ張りだしてみるつもりだ。
橋梁にさしかかって、電車がガタガタと音を鳴らした。
川が遠くまで広がっている。
帰省中、直人とも会う約束をした。
あいつの隣にいたら、また自分の汚ねぇ感情を見つけるかもな。
でもあいつに「おめでとう」って言えたから、どろどろのハートんなかにも、ちょっとはきれーな部分もあるんじゃねぇのって、俺は最近思ってる。
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