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屋敷の裏手にある秘密の隠し通路から、魔獣がのっそりと顔を出した。
ばったりと出会った青年は思わず言葉を失った。
魔獣はやさしい目をして言った。
「あれ? 君も泥棒の仲間?」
「オリバー? 何ふざけたこと言って」
「ん? なんで君は僕の名前を知っているの?」
「え?」
「君は一体……」
「オリバー……逃げよう! 今はとにかく逃げるんだ!」
青年の温かい手が魔獣を連れて暗闇の中へと駆け込んでいく。
「オリバー、よかった。本当によかった」
やがてたどり着いた森の中で、何度も繰り返すレイにオリバーは首を傾げた。
「だから、君は一体……悪い人の仲間? 盗人? 僕泥棒は嫌いなんだ」
「もういいよ、オリバー。僕は泥棒はやめた、ただの君の友達だ」
「友達?」
「うん、これからは仲良く一緒に暮らしていこう」
レイの心臓の音が、明るく穏やかな音を奏でるのを確認したオリバーは、深く息をついた。
「あーよかった。レイ、俺の願いが叶ったわ」
「……あいかわらず、演技が得意だね、オリバー」
〈おわり〉
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