第一章 終わりの始まり

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      ※  彼の住むアルタ村は、アプル山脈を挟んでサヴォやプロイスヴェメといった隣国との国境に程近い場所にある。  しかし、険しい山に護られて攻められることはまず無い。  恐らくサヴォは、山脈が途切れる南西及び海から王都を急襲したのだろう。  村に帰ったら、まず長老達に知らせ、それからどうするか皆で話し合わななければ。  そんなことを考えながら、彼は山道を走る。  と、その足が急に止まった。  ガサガサと下草が揺れる音がする。  注意深く周囲を見回すと、巨大な黒い塊が動くのが見える。  その視線の先を追うと、傷を負った二人の甲冑姿の青年の姿があった。  奴は、あの二人を狙っている。  見ず知らずの人とは言え、目の前で殺られるのは寝覚めが悪い。  彼は咄嗟に背に背負っていた弓を構えると、黒い固まりに狙いを定め叫んだ。 「動くな!」  凛とした声が、澄んだ空気の中に響く。  声に気付いた二人のうち黒髪の青年がこちらを向き、腰の剣を抜こうとする。 「何者だ? 誰に向かって弓を引いていると……」 「死にたくなかったら黙ってろ!」  彼の鋭い言葉に、黒髪の青年は図らずも口をつぐんだ。  その背後では、もう一人の青年が肩で息をしながら不安げに彼の方をみつめている。  そのまましばらく、三人は凍りついたように身動き一つしない。
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