第一章 終わりの始まり

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「ところで、なんであんな所に?」  背に揺られながら問う殿下に、やや間をおいてから彼は答えた。 「その質問、そっくりあんた達に返すぜ。……俺は、下の街に立った市に買い出しに出た帰りなんだ。でも、行ってみたらそれどころじゃ無かった」  彼の言葉に、背の上の殿下は僅かに身を硬くする。  それに気付かぬふりをして、彼はさらに続けた。 「うちの村は僻地だから、秋に税金を納める方向が変わるだけだろうけど。偉い奴らはどうだか」 「そこまで知っているのに、私達が何者か聞かないのか?」  突然の殿下の言葉に、彼は思わず笑った。  そして改めてこう言った。 「悪い、自己紹介がまだだった。目下から名乗るのが貴族様ヘの礼儀だったっけ」  後ろから着いてくる黒髪の青年が何か言おうとしたが、彼はまったく気にする様子はない。  あっけらかんとした口調でこう言った。 「俺は、バル。物心つく前からここにいる」 「バル?」 「本当はもっと長いらしいんだけど、面倒くさいから忘れた」  裏表ない彼……バルの言葉に、殿下の顔に笑みが浮かぶ。  そして、さも面白いとでも言うように殿下は名乗った。
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