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「私はカルロス。この騒ぎでサヴォに討たれたカルロス四世の嫡子で、パロマ侯ということになっている」
「殿下……」
呆れたように言う黒髪の青年をかえりみて、カルロスはさらに続ける。
「彼は私の友人の、ホセ。ここに来るまで、ずっと私を助けてくれたんだ」
それを聞いて、バルは短く口笛を吹いた。
「じゃ、カルロスにホセ、俺の小屋はお屋敷とは比べ物にならないくらいちっぽけだけど、我慢してくれないか?」
その言葉が終わると同時に、視界が開けた。
眼下に広がる村の中央広場には、すでにサヴォの国旗が翻っていた。
※
二人の客人に気を使ったのか、バルは人目を避けるように村へ入り、『小屋』と呼んだ自分の家へと駆け込んだ。
カルロスを寝台の上に降ろすと、装備を解いたらどうだと促した。
「ま、俺が信用できないならそのままでも構わないけど」
心の内を読まれ返答に窮するホセとは対象的に、カルロスは穏やかに笑いながら自らの甲冑に手をかけた。
主の様子に、ホセも不承不承武装を解く。
両者とも思いのほか多くの傷を負っているようで、服は所々血が滲んでいた。
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