第一章 終わりの始まり

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 バルはしばし無言で二人を見つめていたが、部屋の片隅にある戸棚を指さした。 「そこに服が入ってる。粗末で申し訳ないけど、適当に見繕って着替えてくれて構わない」  そして、ちょっと水を汲んでくる、と言い残すと部屋を後にした。      ※  中央広場にある水場には、街で見たあの立札が設置されている。  バルはつまらなそうにそれを見つめていたが、ややあって桶を泉に放り込む。  その時だった。 「無事だったのですか、フェダル? 帰りが遅かったので心配していたんですよ」  背後から声をかけられて、バルは大きくため息をついてから振り返る。 「……長老、俺はもう子どもじゃないって」 「ですが……」  長老と呼ばれた男性は、やれやれとでも言いたげな顔で立札に視線を向ける。  そして、重い口を開いた。 「明日の正午に村人全員ここに集まれと、サヴォ側のお達しです。くれぐれも……」 「俺達村人は関係ないだろ? 俺は難しい話をされてもわからないし」 「そうとも言えないのです。いらっしゃるのは……」      ※ 「どうしたんだい? 顔色が優れないじゃないか」
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