堕天の魔導師

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「いいや。それはないね。俺がこんな不良だってこともあるんだろうけど、教会といってもいつも通りだよ。暴動によって襲撃されるなんてことはまずない。そもそも、一般の神父である俺には、マクスウェルを倒すほどの能力もないし。金が無いのは単に王朝からの分配がなくなったせいだよ。町の人がお布施をくれるから食いっぱぐれないけどさ」 「なるほどねえ」  そこだけ煽りを食らうんだな、とラグランスは複雑な気分だ。  目を向けると、町中の様子は昨日と同じく非常に普通。どこにでもある地方の町そのものだ。パン屋からは焼き立てのいい香りが漂い、酒場では昼間だというのに酒盛りをしている男たちがいる。威勢のいい呼び込みをする八百屋があり、子どもたちがバタバタと駆け回っている。 「マクスウェルは、この町を大事にしているんだな」  あまりに普通。しかし、それがどれだけ大変なことか。  王朝の庇護がないこの場所は、まさにマクスウェルが守っているのだ。魔導師として、そして吸血鬼として、ここの秩序を守り、流通を確保しているからこそ、ここは普通のままでいられる。
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