堕天の魔導師

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 吸血鬼に対抗するための秘法の中心になるのは光だ。しかし、単純な光魔法では何の効力もないことは、この間戦ったラグランスも知っている。 「いいですか。精霊を呼び出す。これが要です」 「はい」  午後、教会の礼拝堂を使って魔法の練習をするラグランスに、マーガレットの鋭い声が飛ぶ。いわゆる聖なる光というものを使いこなせなければいけないのだが、その手前で精霊を呼び出し、光の道筋を作らなければならなかった。これが難しい。 「がっ」  集中していた右手がちりっと痛む。と同時に大爆発。本日二度目だ。めちゃくちゃ痛い。今度は前髪が少し縮れた。 「うわっ。火力だけ上がっている感じ」 「集中力がまだまだですね」  そんなラグランスに手早く治癒魔法を使いながら、マーガレットは大丈夫かしらと不安になる。基礎的な面は随分と上がっていることは、枢機卿にもなると触れているだけで解る。しかし、この大掛かりな秘法を使いこなすのには達していない。そこが問題だ。 「最後はあなたの気持ち次第ですよ」  だからこそ、マーガレットは強い口調でそう注意してしまうのだった。
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