堕天の魔導師

1/239
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
 この国では、神に背くとみな等しく吸血鬼になってしまう。  何がどうなれば吸血鬼になるのか。誰も知らなかった。単なる言い伝え、戒め程度の話だった。神に背くような行いは、日の光を浴びて生活することが出来なくなる。そういうことだろうと、誰もが解釈していた。  しかし、事実はそれ以上に残酷だった。吸血鬼は何らかの比喩ではなく、本当だったのだ。さらには、それは強力すぎる呪いでもあった。  それが起こったのは、今から三年前のこと。そう、つい最近、これは事実だと人々は知ったのだ。  一人の有能な神父であり魔導師であった男が神に背いた時、彼は言い伝えの通りに吸血鬼へと堕ちてしまったのだ。目撃した者も多数おり、それが言い伝えではなかったことを、多くの人は知ることになった。  堕ちた神父は突然、目の前にいたいたいけな少女に食らいつき、その血を一心不乱に啜った。その後はもう、恐怖とパニックだった。少女から引き離そうとしても離れず、魔導師として習得した能力を用いて邪魔する者を排除した。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!