堕天の魔導師

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 にこっと笑って呼びに来た枢密院職員の笑顔を、ラグランスは一生忘れないだろう。結果、二時間のお説教と反省文を書くことになった。すでに魔導師として顔を覚えられていた。この事実を、ラグランスは失念していたのだ。で、日頃から魔導師に不満のある奴がマントを着てませんでしたと密告したというオチ。 「はあ」  そして今、敵意むんむんの視線を向けられている。これ、どうしたらいいのだろう。というか、どうして敵意を向けられるのか。だって、吸血鬼問題を解決しようとしているのに。まさかこの町にいる人たち全員が魔導師に不満があるというのか。 「おい」  とぼとぼと歩いていると、見るからに不良な方々に声を掛けられた。手には剣やら斧やら、昼間だというのに火のついた棒を持っている。明らかにヤバい。五人組のその不良は、鋭い眼光でラグランスを睨んでいた。 「あ、あの」 「てめえ、王朝のイヌだな。ここはマクスウェル様のお膝元、即刻立ち去りやがれ」 「え?」  予想していなかったことをバンっと言われ、ラグランスは目を丸くするしかない。えっと、それって、どういうこと?
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