堕天の魔導師

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「マクスウェル様、な。町で下手な発言はしない方がいいぜ。ここはマクスウェル様が絶対だ。いいか」  こくこくと頷くと、口を解放してもらえた。なるほど呼び捨て厳禁。ここではマクスウェルが絶対君主というわけか。それにしても、先ほどの不良っぽい自警団の様子から解っていたことだが、マクスウェルはここの領主として住民たちにちゃんと認識されているらしい。 「どうにも妙なことばかりだな」 「ははん。その様子だと噂だけ信じて乗り込んで来たというところか。じゃあ、詳しいことを教えてやるから、あんたの話も聞かせろ。どうせその調子じゃ泊まるところもないんだろうし、うちの教会に泊まりな」  そういうわけで、トムソンの住む町外れの教会へと移動することになったのだった。 「魔導師を拾ってくるなんて、あんたバカ?」  教会にて、馬鹿にされるのはラグランスではなくトムソンだった。彼はまあまあと宥めつつ、ガンガン詰め寄ってくるシスターに苦笑している。  小柄なシスターは非常に可愛らしい女性だが、その言葉は刃のように鋭く、勢いは戦車のようだ。
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