堕天の魔導師

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 吸血鬼は非常に凶暴な生き物だと、話の通じる相手ではないと、この時、初めて痛感させられた。彼らにとって自分たちは単なる食料でしかない。その事実が、とても大きかった。神父は少女の血を啜るだけでは飽き足らず、さらにその血肉を貪り、腹が満たされるとその場を去って行った。  それから三年の月日が流れた。堕ちた神父、吸血鬼と成り果てた彼はある地域を支配し、領主のように振る舞っている。だが、これは他の地域に被害が出ぬよう、そうするしかなかったと言うべきか。本来その地を治めるべき領主や国王は、吸血鬼がこちらまで浸食して来ぬよう、定期的に食料となる奴隷まで献上しているほどだ。  闇の王を刺激しないのが一番。魔導師を倒すというだけでも至難の業だというのに、さらに化け物と化した奴は手に負えない。とはいえ、吸血鬼といえども元は人の子。いずれ寿命が尽きる。その瞬間を待つしかない。それが、国家の下した判断だったのだ。  でも、それでいいのだろうか。呪いを解く方法はないのだろうか。彼が背いたこととは何だったのか。結局、その点は解明されていない。では、何が吸血鬼になる条件なのか。
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