堕天の魔導師

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 具体的な数字が出てくると、余計に気持ちが暗くなる。それだけの人間が、マクスウェルの食料として殺されている。どうしても、奴隷だから、食料だからと割り切れない気持ちが大きい。 「まあ、そうやってマクスウェルもこの町の人間には手出ししなくなって、いよいよ俺たちは彼に頼って生きることになったんだよ。王朝からの支援はマクスウェルに対してしかないからな。俺たちのことを面倒みてくれているのは、彼しかいないんだ。魔導師として、賢者として、あの人は町を守ってくれている。自警団を作ったり流通を確保してくれているのも彼だ。解るか。誰もが彼を守っている。それは守られているからだ。だから、あんたには敵意の目が向けられるし、自警団も追っ払おうとする」 「――」  実情は自分が思っていたよりも複雑で、そしてマクスウェルが今も正常であることを示すものばかりだ。 「では、どうしてマクスウェルは、吸血鬼なんかになったんでしょう」  ラグランスにはそれが解らなかった。今も尚、神の罰を受ける身でありながら魔導師として生きている。この矛盾はどこから生まれるのか。
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