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「思ってなかったって? おいおい、魔導師とあろう人間が嘘はいけないぜ。話し合うと言うが、あんたの中でマクスウェルはとんでもない化け物だったんだろ? 本当に友人として接することが出来たのか?」
ぐうの音も出ない指摘だ。ついさっきだって倒す方法を考えてしまった。ラグランスは唇を噛むことしか出来ない。
「まず無理よ。逆に食われて終わりね。何人か倒しに来たけど、みんなやっつけられてマクスウェルが食べちゃったもの」
そしてラピスが、洒落にならない情報を付け加えてくれるのだった。
目覚めたら、真っ赤な世界があった。
そんなことを経験した人間は多くないに違いない。
夜、月が東の空に昇る頃に目覚めたマクスウェルは、寝起きの頭でそう思う。
自分が吸血鬼という存在になったのだと、気づいたのは目の前の世界が真っ赤だったからだ。一面の赤。どこもかしこも血だらけで、そして、自分も血塗れだった。
周囲の怯えた目で、これが自分の所業だと理解するしかなかった。そして、舌に残る、何とも言えない甘美な味。それが、人間の血肉だと理解するのは一瞬だった。
「ああ」
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