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どうしようもないと、その場は逃げた。いや、逃げるしかなかった。そしてここまでやって来た。
来た当初は、自分の身体の勝手も解らず、ずいぶんと苦労した。しかし、紳士的に振る舞うことが身を助けた。魔導師としての経験が、マクスウェルを最後の最後で化け物にしなかった。神に背き堕天したとされた自分が、魔導師の経験に救われるとは、何とも皮肉なものだ。
今はもう、あの重たいマントは羽織っていない。普段はこの城で手に入れたスーツで過ごしている。神に背いたとされた者が神父服を着ているなんて、滑稽以外の何物でもない。
「目覚められましたか」
「あ、ああ」
まだベッドの上でつらつらと考え事をしていたら、身の世話をしてくれるマリーがやって来た。そしてベッド脇にコーヒーを置いてくれる。
メイド服に包む少女のマリーは、マクスウェルが吸血鬼として助けた一人だ。つまり、彼女もまた、吸血鬼である。
「本日は町へ行かれるのですか?」
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