堕天の魔導師

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「俺が、解決してみせる。大好きな君を、取り戻すために」  魔導師としての資格を得たラグランスは、遠くに見える城をきっと睨み付けていた。  魔導師。  この言葉の響きに憧れる人は多いだろう。胸を張って歩くラグランスもまた、この名称が持つ蠱惑的な響きに引き寄せられた一人だ。それはあの最悪の瞬間が訪れる前から魅了されていて、必死に努力した。 「ふふっ。ついに俺も崇め奉られる魔導師の一人」  魔導師の称号を持つ者を示すマントを翻し、ラグランスは思わずにやにやしてしまった。  この国では魔導師とは賢者でもある。つまり、魔導師を名乗るための試験は超難関なのだ。それをパスするのに、ラグランスは三年を費やす羽目になった。術法は完璧なのだが、一般教養が大変すぎた。暗記科目が死ぬほど苦手だったのだ。  どうしてこれほどの教科が必要なんだと、分厚い参考書の数々と格闘しつつ、何度試験問題を呪ったことか。そもそも、神父の資格を持っていないと受けられない試験なのに、さらに難関試験を用意している意味が解らない。そう何度も何度も悔しい思いをしつつ、机に齧り付いた。
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