堕天の魔導師

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「彼と同期だったなんて、誰も信じないほどにな」  試験に費やした時間の長さを思い出し、ラグランスはふと遠い目をしてしまう。自分と彼との差の大きさをつくづく実感したものだ。それに、自分がなかなか試験に合格しないせいで、どれだけの人が、彼の餌食となったのだろう。そう思うと、非常に胃のあたりがキリキリとしてくる。 「さて」  それはともかく、無事に魔導師となり、ラグランスはようやく使命を全うできるというわけだ。それはもちろん、堕ちた神父を助ける、もしくは討伐する。  ラグランスがそこまで堕ちた神父を思うのはもちろん、彼のことを密かに愛していたからだ。共に魔導師を目指す同級生以上の感情を、ラグランスは持っていた。あちらは、ラグランスのことなど何とも思っていなかったかもしれないけど。悲しいかな、片想いだ。  それなのに、彼は堕ちてしまったのだ。今でも信じられないが、目の前で起こったことを否定することは出来ない。憧れ、勝手に恋心を抱いていた友人は、吸血鬼に成り果ててしまった。
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