堕天の魔導師

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「そうだな。俺たちも、マクスウェルがあの城に住みだした頃は、どうなるかと不安だった。でも今は、税金が免除されていることもあって、王朝がこの辺りを治めていた頃より快適だ。皮肉なもんさ」  トムソンは苦笑を浮かべて、同じように町中に目を向ける。  いつもの光景。それは結局、誰かが守ってくれるからこそ成り立つ。そんな当たり前を、マクスウェルに教えられている。これほど皮肉なことがあるだろうか。神に背いた者の手で、日常があるだなんて。 「神父としては複雑ってか」 「それはそうさ。正道を説く者が、堕天した者の力を借りなきゃいけないというのは複雑だね。とはいえ、ここが安全安心なのはマクスウェル様あってのこと。これは事実だ。ってなると、神に背いたっていうが、一体何にってのは俺も疑問になってくるよ。どう考えても優秀で真面目な男だ。そこらの領主の方が野蛮人に見えてくるほどにね。一体何をすれば吸血鬼になるのか。個人的にも興味がある」 「それで協力する気になったってわけか」
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