堕天の魔導師

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 友人の名、堕ちた神父の名はマクスウェルという。眉目秀麗、頭脳明晰、高身長と、ラグランスの持たないものの総てを持っていた男だ。それなのに、彼は吸血鬼になってしまった。  口さがない人は、あまりに完璧を求めすぎて堕ちたのだろうと言う。しかし、それは清廉潔白であれという神の教えに背くことなのだろうか。吸血鬼になる唯一の条件が神の教えに背くである以上、何だかしっくりこない。  この国、クロマン王朝と呼ばれるここでは、クロマーという神を唯一神としている。クロマーはこの国を作り上げ、色を作り出したとされている。それまでは灰色の世界が広がっていたというのだ。 「まっ、実際は知らんけど」  神父であり魔導師であり賢者である者が絶対に言ってはならないことを、さらっと言っちゃうラグランスだ。そこは、「そうそう、さすがクロマー様サイコー」というべきところだ。こういうところが、彼が試験に落ち続けた理由の一つだと、本人は全く気づいていない。
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