堕天の魔導師

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 その理由はもちろん、ラグランスの格好にあるのだろう。魔導師の資格を得ると制服を与えられる。これがまあ、目立つのだ。中は神父服と変わらないのだが、先ほども誇らしげに翻したマントが目立つ。紺色のマントにはこれでもかと金糸の刺繍が施されている。目立たないわけがない。それもそのはずで、魔導師は国の威信を背負うものでもあるからというのが理由だ。しかも、恐ろしいことにそれは常に身に着けていなければならないとされている。  つまり旅に出ていようが関係ない。着ていなければ即、中央の枢機院呼び出される。そして延々と説教を食らった上に、反省文五十枚の刑が待ち構えているのだ。これがまあとても恐ろしい。  なぜラグランスがこれを知っているかといえば、ご想像の通り、すでにその罰を食らったことがあるせいだ。その時のことを思い出し、ラグランスは思わず遠い目をしてしまう。
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