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提案
麦茶に口をつけながら右へ左へ、左から右へ……さっきから僕は声がする方にただ顔を向ける。
くだらないこの話題は……どうしたらいいのだろうか?
僕が言葉を発することはなく、もうすぐで一時間になろうとしている。
明るい長めの茶髪に、左右一つずつのピアスに、首や手首、指にも鈍く光るシルバーの数々。
鷹野創一は僕の右側でもう何度声を荒らげたか。
黒髪短髪に、シャツのボタンを二つ開けた胸元にはよくわからないタトゥーが覗き、筋肉も隆々の男。
櫛田竜は僕の左側でタルそうにタバコを咥えてフーっと白煙を吐く。
「だーかーらぁっ!ちょっと金貸してって言ってんだろーがっ!」
「もう何度目だよ。てめぇに貸す金はねぇし、むしろ、俺が欲しいくらいだっつの」
同じことを何度も……残念ながら頭の弱いこの二人はいつだって僕の部屋で何時間だって同じやり取りを繰り返す。
僕たちは物心がつく前からの幼なじみで、保育園でも小学校でも中学校でもいつも一緒だった。
高校は僕だけ離れたが帰ってきたらいつも二人は僕の部屋に居たし、大学に進学した今だって(二人はフリーターだが)……気づくと二人もやってきていつだって僕の家で部屋にあるこの小さなテーブルを囲んでそれぞれの定位置に着く。
「「なっ!一太も一緒に泥棒しようぜ!」」
いつの間にそんな話に辿りついたのか?
二人の顔がこっちを向いて、僕、鈴木一太は首を傾げた。
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