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「ちょっと、もっと軽めに握りなさいよ。いくらなんでも力入り過ぎ」
「わわわっ、ごめ、ごめん」
「なに今度は手を放してんのよ。私の手を握るの初めてじゃないでしょ
俺は何をこうも緊張してるんだ。
こんな時にドギマギしてる場合じゃない、今は戦闘に集中しなきゃだな。
バチンッ!?
…………つぅ
「いったぁああああああああああああい。なにすんのよ守っ!?」
「いや、俺は何も」
「何も? そんなわけないでしょ? さっき手におもっきし電気みたいなのが走ったんだから」
確かになんなんだ今のは?
静電気? いや、俺の身体は別に披露なんてしてないし、帯電だなんて考えられない。俺っていうか、エルジュの身体の方に問題があるんじゃ。
「何よその顔、私に問題があるみたいな顔して。いい、言っとくけど私は火の属性なの、電気が発生するような雷の属性なんて持ってないんだから。守、あんたはまだ属性確かめてないじゃない。原因の確率はそっちのほうが高いんだからね」
いや静電気だったら属性関係なくないか?
「くく、なるほど。そういうことかいな(よいよですわ義経どの……)」
「なんだよ、刻宗?」
「いや、なんでもあらへん。こっちの話や」
なんだなんだ、なんか刻宗はこの電気の原因を知ってるみたいな口ぶりだな。しかも「くくくっ」て笑ってるし。
まあ、あいつはいっつもヘラヘラした売れないお笑い芸人みたいなんだけども。
気を取り直してもう一度試すと、今度は何事もなく彼女の手を握ることができた。
うへっ、ちょっと待て、待て待て。
俺はサッと眼を横へ流すと、繋いでいる手に注目した。
これって……恋人繋ぎじゃないんすか?
敢えて目で確かめなくとも指と指がそれぞれの付け根に4か所擦れ合わされるので、見る必要もないのだが、なんとなく視界におさめて見たかったので首は前を向いたまま極限の位置まで眼球を動かした。
ハッキリと対象物を捉えることはできなかったが、瞳に映る画像が例えブレていたとしても、間違いなく恋人しかしないと言うあの繋ぎ方をしていた。
こんなシリアスな戦いの場面にいるのに、俺は別の意味で高揚していた。
初めて彼女と出逢った場面が走馬灯のように脳裏へと浮かぶ。山だと思った大きな二つの割れ目は確か彼女のお尻だったんだよな。
まさかコイツと俺が強力して戦う日が来るだなんて、誰が思うだろうか。
「ちょっと、さっきからなに親指をスリスリと動かしてるのよ」
「えっ、いや……エルジュの此処すべすべするなって」
「はっ、こういう時にバカじゃないの!? それより用意出来たなら行くわよ」
「おっ、おお……」
…………って、飛んでる?
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