5.月夜

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「どうだ?」 「美味しい」 「そうか」  わかりやすく嬉しそうに微笑む皇丞が、二口目を口に含む。 「こういう味、好きなの?」 「あまり飲まないかな」 「じゃあ――って! 車!」  今更だが、車で来ていることを思い出す。 「代行を頼んである」  どこまでも隙がない。 「本当はホテルのレストランで食事をして、そのまま泊まることも考えたんだがな? さすがに自制できる気がしない」  どうせ同じ家に帰るのだから、自制するのは同じではないか。  それは口に出さなかった。  今の私は、彼の自制に助けられている。 「だから、それはまた今度、な?」  見透かされている。  そして、その上で、逃さないと言われているように感じるのは、自惚れだろうか。 「皇丞は――」  私の言葉は、再びのノックの音に遮られた。  今度は支配人一人ではなく、スタッフ二人も一緒だった。  スタッフはそれぞれ両手にお皿を持っている。  まず、支配人が持っていた長方形のお皿がそっと置かれた。 「オードブルでございます。季節の野菜と――」  すごく凝ったお洒落な名前なのだが、お皿の上の小さくて瑞々しい料理をじっと見ているうちに、あっさり説明は終わってしまった。 「スープでございます」  スタッフがオードブルの横にスープを置く。 「地産牛蒡のスープは――」  シャンパン並みに透き通った液体は、確かに牛蒡の香りがする。 「魚介と季節野菜のフリットでございます」  オードブルの奥に置かれたお皿には、一口サイズのフリットが五つのっている。エビとホタテ、コーンはわかる。あとは衣に包まれて謎。
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