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自分でも、言っていて歯切れの悪さが気持ち悪い。
ただ、この数週間の出来事を思うと、自信満々に『ねぇ、私のどこが好きなの?』とは聞けない。
皇丞がもう一度ため息をつく。
それから、空のグラスにシャンパンを注いだ。
ちらりと私を見て、ボトルをクーラーに戻す。
私のカップにはまだコーヒーが残っている。
彼はシャンパンを一口飲み、また私をちらりと見て、もう一口含む。
「二年前の忘年会の時、だな。本気でお前を欲しいと思ったのは」
「それ、この前も言ってたよね? 私、よく覚えてないんだけど」
「だろうな。お前にとっちゃ、記憶に残るような会話じゃなかっただろうから」
何を話したのだろう。
そもそも、私と皇丞は席も離れていたし、皇丞の横にはきらりがぴったりと貼りついていたから、私じゃなくても女性社員は彼と話せていないと思う。
「その数日前、仕事帰りにお前を食事に誘ったら、あっさり断られた」
「はい?」
「俺の容姿や肩書に釣られる女だとは思ってなかったが、上司の誘いとなれば礼儀として受け入れると思った。が、あっさり断られた。『ありがとうございます。でも、上司としてのお誘いであればランチミーティングでお願いします』って」
言った、な。
御曹司の肩書を持つ鬼上司と食事だなんて、料理の味なんてわかるはずがない。まして、お酒が入ってうっかり日頃のうっぷんが口をついては大変だ。
当時の皇丞に対する私の苦手意識は、今思うと少し過剰なほどだった。
「二次会って名目なら来ると思った。お前、酔ってたし。だから、忘年会の後でもう一度誘った。けど、あっさり断られた。しかも、すげー笑顔で」
「はぁ……」
記憶にございません。
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