6.乗っ取り

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「あんたが興味持つのもわかるけど、ダメだよ。なんせ、木曽――梓ちゃんは東雲くんがお兄ちゃんの店に連れて行った唯一の女性(ひと)なんだから」  平井さんが自分のことのように胸を張って言う。 「え? マジ!? 梓ちゃん、晋ちゃんの店に行ったの?」  栗山課長がずいっと詰め寄ってくる。  そうそう。栗山課長と平井さんのお兄さんは幼馴染。  ということは、栗山課長と平井さんも幼馴染?  ちょっと混乱しつつあるが、ようはみんな親しいということだ。 「欣吾、近すぎ」  ぬっと伸びてきた手が私の肩を抱き、その拍子に一歩後退った私は栗山課長から離れる格好となった。 「皇丞。晋ちゃんの店に行ったのか? 梓ちゃんと?」 「行ったけど? ってか、馴れ馴れしく名前を――」 「――マジかぁ……。マジなのかぁ~」  栗山課長がその場にしゃがみ込む。  何事かと皇丞を見上げると、彼もまた私を見て、気にするなと言わんばかりにため息をつく。 「欣吾、梓の言う通りだ。人の女を誘ってる暇があったら、帰って飯食って寝ろ」 「う~……」  唸りながら、栗山課長がとぼとぼと去って行く。 「梓。あいつの誘いには乗るなよ」 「え?」 「チャラそうだが、実際にチャラいからな」 「そうそう。面白おかしいキャラで警戒心を解いて、笑ってるうちに食べちゃうのがあいつのヤリ方だから」と、平井さんが頷く。 「はぁ……」  散々な言われようだが、三人がとても打ち解けて親しいのはよくわかった。 「あ、そう言えば――」  皇丞と平井さんが並んでいるのを見て、思い出す。
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