25780人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたが興味持つのもわかるけど、ダメだよ。なんせ、木曽――梓ちゃんは東雲くんがお兄ちゃんの店に連れて行った唯一の女性なんだから」
平井さんが自分のことのように胸を張って言う。
「え? マジ!? 梓ちゃん、晋ちゃんの店に行ったの?」
栗山課長がずいっと詰め寄ってくる。
そうそう。栗山課長と平井さんのお兄さんは幼馴染。
ということは、栗山課長と平井さんも幼馴染?
ちょっと混乱しつつあるが、ようはみんな親しいということだ。
「欣吾、近すぎ」
ぬっと伸びてきた手が私の肩を抱き、その拍子に一歩後退った私は栗山課長から離れる格好となった。
「皇丞。晋ちゃんの店に行ったのか? 梓ちゃんと?」
「行ったけど? ってか、馴れ馴れしく名前を――」
「――マジかぁ……。マジなのかぁ~」
栗山課長がその場にしゃがみ込む。
何事かと皇丞を見上げると、彼もまた私を見て、気にするなと言わんばかりにため息をつく。
「欣吾、梓の言う通りだ。人の女を誘ってる暇があったら、帰って飯食って寝ろ」
「う~……」
唸りながら、栗山課長がとぼとぼと去って行く。
「梓。あいつの誘いには乗るなよ」
「え?」
「チャラそうだが、実際にチャラいからな」
「そうそう。面白おかしいキャラで警戒心を解いて、笑ってるうちに食べちゃうのがあいつのヤリ方だから」と、平井さんが頷く。
「はぁ……」
散々な言われようだが、三人がとても打ち解けて親しいのはよくわかった。
「あ、そう言えば――」
皇丞と平井さんが並んでいるのを見て、思い出す。
最初のコメントを投稿しよう!