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『キスだけで我慢できなくなったら、そう言うさ』なんて彼の言葉に、そう言われた私はどうしたらいいのかと困惑した。
『言われる前に堕ちたらいい』
要は、皇丞が我慢できなくなる前に私から求めてほしいようだ。
私から求めるとか……。
皇丞からキスされるたびに、その時を想像して私は唇をきつく結んでしまう。
「――以上です」
私は説明を終えると着席し、ペットボトルの水を口に含んだ。
全員がもう一度資料を読む。私は、質問や意見が出るのを待つ。
「あのぉ……」
絶対に資料を呼んでいないだろうきらり。
「ランクって、どうやってつけるんですか?」
今話したわよね、資料にも書いてあるわよね、と言いたいのを我慢して、私は資料をめくる。
「五ページにあるように、SNSを中心にウチの商品のお勧めポイントや買って失敗したことなんかを募って、わかりやすくポイント制にしてランク付けするのがいいと思っています。買って良かったランキングと買って失敗だったランキングを作って――」
「――ありがちじゃないですぅ? それだと、Sシリーズばっかりですよね?」
我が社の家具は三つのシリーズにランク付けされている。
S、V、D。
「そんなことないわ。長く使える良い品質のものを求める主婦は多いのよ」
「でも、こういう雑誌を買うのって、安いもの大好きなおばさんですよね?」
きらりが既刊号をペラペラと、いかにも興味なさそうにめくる。
「林海さんの言うおばさんの定義がよくわからないけれど、恐らくウチの顧客で一番多い年齢層よ」
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