6.乗っ取り

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 きらりの言うおばさんとは、主婦を一括りにしているのか、四十代や五十代を言っているのかわからないが、Dシリーズは買ってもらえなくても、インテリアや収納用品などに凝って、シリーズでまとめ買いしてく れるなど、大事なお客様だ。安物買いだと侮れる金額ではない。 「でも、Dシリーズは買ってくれないですよね」 「林海さん。今はDシリーズ一点を買ってくれるお客様とSシリーズ十点を買ってくれるお客様のどちらが大事かを話し合っているわけじゃないのよ」  見かねた平井さんが言う。 「DシリーズはCMでも――」 「――じゃあ! この顔出ししてる主婦を、人気俳優に変えるとか!」 「はい!?」 「だって! このおばさん誰? って感じじゃないですか」  普通の主婦がランキングの詳細を説明することで、親近感を持てるし、ヤラセ感がなくなる。  例えば照明。高級感があるのに安いけど掃除がちょっと大変、とか言われると購入を迷うだろう。けれど、実際に主婦が掃除している写真付きで『ココが大変!』とか説明されたら、それくらいなら気にしないと思うかもしれない。そうすることで、主婦目線でしっかり評価されていると感じる。  人気俳優がお掃除シートや掃除機を持って掃除の大変さをアピールしても、現実味がない。 「林海さん。この雑誌のコンセプトは尊重しなきゃ。その上で、より読者の購入欲求を高めるような――」 「――でもでも! 格好いい俳優さんや綺麗な女優さんが『私もコレを使ってます』って紹介してたら、欲しくなりません?」  なりません? って聞かれても……。
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