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会議の飲み物を各自で用意するようにと決めたのは、社長。
希望を聞くのは手間だし、自分で好きなものを用意すればいいと言って。
だからなのか、その発言あたりから自動販売機が増えた。
社長も水を口に含む。
「社長。始めてよろしいでしょうか」
皇丞が聞き、社長が頷く。
「では――」
首謀者ともいえる皇丞は、予め用意していただろう台詞をつらつらと言う。
この企画についての説明と、プレゼンすることになった経緯。
そして、企画の発案者である私の発表が促された。
ゆっくり鼻呼吸をして、立ち上がる。
私は、先週と同じことを言うだけだ。
「広報課、木曽根梓です。まず、私がこの『HOME+@』での特集に着目した理由ですが――」
そうだ。
そもそもこの雑誌に目を付けたのは私だ。
きらりは私の企画を乗っ取りたいだけで、この雑誌に思い入れがあるわけではない。
私はこの雑誌の読者に与える影響力や、売上げアップの実績を交えて説明する。
内容は先週と同じだ。
だが、緊張度が違う。
緊張のあまり早口にならないように気を付け、表情が硬くならないように気を付ける。
全身に力が入って、痛い。
「――売り場でも、雑誌に紹介された商品であることをアピールし――」
専務たちからの鋭い視線が頬を射る。
きらりに至っては、失敗しろと念じているだろう。
お返しに、私も念じて差し上げなければ。
言葉じゃなくて舌を噛んでしまえ!
本当ならば今頃は雑誌の担当者と打合せしているはずなのだ。
「――以上です」
一礼し、背筋を伸ばす。
「では、次に林海きらりさん」
「は、い!」
変な間のある返事をして、きらりが父親の後ろを通って前に出る。
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