6.乗っ取り

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 どちらにせよ、最初はにこやかに聞いていた専務も頬がピクピクし始めている。  社長の表情は見えないが、専務と同じか、違えばそれはそれで恐ろしい。 「――以上です」  ため息が聞こえそうなほどか細い声でそう言うと、きらりはそそくさと席に戻り、ペットボトルを握り潰す勢いで水を飲む。  突っ込みどころが色々あり過ぎて、最後まで投げ出さなかったことを褒めてあげたくなる。 「林海さんは、こういった場は初めてですか?」  社長が聞いた。  とても穏やかに。  それに、むしろゾッとしたのは私だけではないだろう。  だが、きらり本人はそうでない。 「はい! そうなんです。ずっと、企画とかさせてもらえなかったんです。雑用ばっかりで!」  さも、やる気はあるのにと言わんばかり。 「そうですか」と社長は、やはり穏やかに言った。 「それについては部長と課長の責任ですね。部下の教育を怠ったのだから」 「え?」  きらりの横で、彦谷部長が青ざめている。 「申し訳ありません」  部長より先にきっぱりとそう言ったのは、皇丞。 「ただね、林海さん。どんな仕事も立派な仕事です。雑用と一言で言ってしまうのはどうだろうね」 「え? あ、はい……」  社長の穏やかさに隠された緊張感を察したのか、単純に諭されて拍子抜けしたのか、気が抜けた返事。 「ただ、企画書はよく書けていますね。気になる点もあるけれど、初めてならとても上手だ」 「ありがとうございます!」  瞳をキラッキラさせるきらりの隣で、宇梶さんが唇を捻ったのが見えた。  彼が協力者……?
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