6.乗っ取り

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 では、彼が先輩の代わりを買って出たのだろうか。  そもそも、彼はきらりと親しいのか。  社長が進行を促し、皇丞が立ち上がる。 「まず、今回の企画は木曽根さんが発案者です。彼女の企画に対して林海さんが内容の改善を求めたことでこの場が設けられたわけですが――」  要するに、私の企画よりきらりの企画を押す奴がいたら前へ出ろ、という内容をものすごく堅苦しく話す皇丞。  私は、正面に座る一同の様子を窺う。 「はい」と手を上げたのは、宇梶さん。  皇丞に促され、その場に立つ。 「営業一課の宇梶です。林海さんの、俳優をナビゲーターとすることで華やかさを持たせるのは賛成です。実際に――」  宇梶さんは他社のイメージキャラクターを例に挙げて、俳優の起用を推す。  私も、俳優を起用することが悪いなんて思っていない。  ただ、『HOME+@』に関しては一般の主婦や編集者が、消費者目線でナビゲートすることで評価されている。  宇梶さんが発言を終えると、専務の隣に座る常務が口を開いた。 「いいんじゃないかな。私も賛成だ」 「私から質問があります」  皇丞が座ったまま言った。 「今回の企画は明確な期限があり、これから俳優を決めてコンタクトを取り、撮影するとなると時間が足りないでしょう。その点は目途が立っているのですか?」  私も思った。  俳優と一口に言っても、男性なのか女性なのか、そもそも引き受けてもらえるのか、スケジュールは合わせられるのか。ギャラの予算もある。  それ以前に、『HOME+@』がOKを出すか。
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