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きらりはスマホからその社長の番号を呼び出しているのか、自分の発言の致命傷に気づかない。
「企画の詳細を話したのですか? 正式にオファーする前に?」
「え? だって――」
「――その内容が他社に伝わる可能性は考えませんでしたか」
「そんなこと――」
「――そんなことじゃないでしょう!」
皇丞の怒声に、思わず肩に力が入る。
静まり返る室内。
専務も、専務派の面々も、フォローの言葉も思いつかないようだ。
外部に漏れた以上、この企画はなしだ。
ちょっと待って、私の企画内容は漏れてない――!?
「林海さん、その社長にはどこまで話したの?」
「え?」
「雑誌名を言った?」
「言って……ません」
隣から皇丞のため息が聞こえた。
「具体的にどう話したんだ」
「雑誌でうちの商品を褒めてくれるだけでいいからって……言いました」
「それだけ?」
「はい……」
「その社長はなんて?」
「いいよ、って」
そんなバカな……。
「林海さん。子供の遊びじゃないんだ。雑誌名もギャラも撮影の日程も知らずに『いいよ』なんて約束のうちにも入らない。しかも、実際にはないプロダクションだ。どういう知り合いか知らないが、騙されたんだよ」
「えっ!? 嘘! だって――」
きらりは口をパクパクさせるばかりで、言葉を継げない。
無言で専務が立ち上がった。
「社長、娘が申し訳ございませんでした」
綺麗に九十度腰を折る。
きらりは信じられないといった表情で父親を見ている。
「言い訳にもなりませんが、初めての企画で確認を怠っていたようです。妊娠中でもあり、情緒も不安定かもしれません」
確かに、言い訳にしてもナイ。
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