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「あんたの元カノがムカつくからってだけで、ホントいい迷惑だったよ」
私たち三人が顔を見合わせる。
確かに迷惑だったろうが、そもそもなぜ宇梶さんがきらりに協力したのか。
「意味がわからないんだけど」
「俺の言葉の意味の前に、あんたの嫁が元カノに何したかはわかってんの?」
「……」
「嫁に首輪でも着けとけよ」
はぁ~、と深いため息は宇梶さん。
「とにかく、俺はもう関わらないから。嫁にそう言っといて」
「……」
「つーか、あんたよくあんな女と結婚すんね。デキたんだっけ? ちゃんと確認したのかよ」
「……は?」
私たちまで、思わず「は?」と声が出そうになった。
「ま、俺にはカンケーないけどさ」
カツと踵が床を叩く音。
「飲んでたぞ、酒。一口レベルじゃなく、普通に何杯も」
「……!」
平井さんが本当に、本当に目を丸くした。
「お前はそれを止めなかったのか?」
低い声と、聞こえるはずがないのだが息を呑む音が聞こえた気がして、見なくても宇梶さんと直が驚いたのが空気でわかった。
皇丞だ。
気づけば十五分を過ぎている。私を迎えに来たのかもしれない。
「妊婦が酒を飲むのを、お前は止めなかったのか? 代わりに企画書を書いてやるような仲なんだろう?」
「……やめてくださいよ」
直に対してバカにするような口調だったのが、心底嫌がっているような、苛立っているような呟きになる。
「冗談じゃない」
平井さんが少し身を屈めて、彼女の足元にしゃがむ私に「ワケありみたいね」と耳打ちした。
以前、平井さんが見たのは腕を組んで歩く二人。じゃあ、今は?
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