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「一歩間違えばお前も謹慎処分だったんだぞ。林海が情報を漏らした場にいたのなら」
「違うと思ったからそうしなかったんでしょう?」
「お前もいたのなら、林海がそう言ったはずだろ? それとも、あいつに庇ってもらえるような関係なのか?」
すごい緊張感。
皇丞を敵に回すと怖いのは、御曹司だからじゃない。
そんな立場がなくても、自分には太刀打ちできないとわからせるだけのオーラというか、漲る自信を感じ取れるから。
「天谷さんのお陰で、そんな関係も終わりにできましたよ」
フンッと鼻で笑う口調。
「ま、天谷さんに俺の代わりができるとは思えませんけどね。頑張ってください」
意味がわからない。
わからないが、きらりと宇梶さんがかなり親密なのはわかった。
「あ、あの女に元カノを追い回してるなんて知られたら、今回程度じゃすみませんよ」
「どういう意味だ」
「あいつは本気で企画を乗っ取ろうなんて考えたわけじゃないですよ。引っ搔き回したかっただけだ。事実、木曽根さんの企画が残ったのは恋人が社長の息子だからだと囁かれ始めてる」
知らなかった。
というか、会議終了からまだ三時間しか経っていないのに、なぜという疑問の方が先にくる。
どれだけ暇なの、この会社……。
「くだらない噂話に花を咲かせる暇があるとは、随分暇な会社だな」
皇丞がため息交じりに言った。
思わず、うんうんと頷きたくなる。
「とにかく、元カノのためを思うなら、未練なんか捨てることですね」
カツカツと遠ざかる靴音に、私たち三人はなぜか息を殺していた。
ドアのすぐ向こうに、まだ皇丞と直がいる。
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