7.つながる想い

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「天谷」 「……はい」 「どうしてここにいる」 「……いえ」 「天谷」 「はい」 「お前の言動がどれほど梓を苦しめるか、よく考えろ」 「……はい」  別れ話の後、直が私の知っている直ではなくなっていく。  私が愛した直が幻想だったのかもしれないが、それにしても違い過ぎる。  直はいつも私を気遣ってくれた。  私だけじゃない。周囲を気遣い、自分よりも優先させる人だった。  なのに、自分の浮気が原因で婚約を解消し、なおかつ新たな婚約者が社内にいる状態で、今も私に接触する意味がわからない。  そんなことをして私が迷惑に思うことや、周囲の視線が私を苦しめることもわかるだろうに。  どうして、なにが直を変えてしまったのか。  それとも、私に本当の直の姿を見えていなかっただけなのだろうか。 「天谷」 「はい」 「梓は依存するような女じゃない」 「え?」 「強い女だ。男に依存して腐る女じゃない」  依存……?  なんの話だろう。 「依存していたのは、お前だよ。それを認められなかったのは、お前の弱さだ」 「……失礼します」  軽い靴音が、勢いよく遠ざかっていく。 「修羅場終了? なんだ――」 「――なんだじゃねぇ」  頭上から苛立ちを隠さない低い声が聞こえ、体勢はそのままに顔を上げる。  人間、後ろめたいことをしようとすると、低い姿勢になってしまうものなのか。  ドアの陰に隠れているのだから身を屈める必要はないのだけれど、私たち三人は寄り添うように縮こまっていた。  だから、ただでさえ背が高い皇丞に見下ろされると、いつも以上に威圧感を持つ。  いち早く身体を伸ばしたのは、平井さん。 「だってぇ。帰ろうと思ったら天谷さんが歩いてくるのが見えたんだもん」
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