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番外編*甘いお仕置き
「はぁ~~~」
両肘を机に突いて、組んだ両手を額に当てる。
「専務。仕事中にため息をつくのはやめてください」
未だ言われ慣れない、俵の『専務』呼び。
「業務の進行に問題があるのでしたら、やはり早急に秘書を――」
「――それは、まだいい」
専務と広報部部長を兼任している俺は、秘書を置いていない。
俵は早く秘書を就かせたいらしいが、断っている。
急な専務交代と専務秘書退職で、秘書課も人員の補充ができていないし、今の秘書課の面々は、長く就いている重役がいるから、交代は簡単ではない。
俺は専務としての仕事もさほどないし、必要に応じて俵が就いてくれているから、今は十分だ。
とはいえ、俵の仕事量を考えると、いつまでもというわけにはいかない。
「つーか、ため息の理由をわかってるだろ」
「専務、今は――」
タイミングよく、昼休憩を告げるチャイムが鳴る。
「――休憩だ」
俵がふぅっと息を吐くと、親指と人差し指で眼鏡のブリッジを上げた。
「梓ちゃんには?」
「おい」
「休憩中だろ?」
「だとしても、だ」
何度言っても、俵の『梓ちゃん』呼びは変わらない。欣吾も、だ。
俺の嫁を馴れ馴れしく呼びやがって!
「で? 言ったのか?」
「いや」
「言うつもりは?」
「……」
「社長秘書として寿々音さんのお世話もしてきた俺が、臨時専務秘書として梓ちゃんのお世話もしてやろうか?」
俵が言うと、冗談に聞こえない。
いや、きっと冗談のつもりはない。
「秘書としてって言うなら、俺をこの業務から外して――」
「――ご指名だ」
「俺はホストか!」
「あちらにとっては、同じだろ」
「お前が代わりに――」
「――相手は社長だぞ。臨時専務秘書の対応じゃ失礼だ」
「なら、副社長か――」
「――往生際が悪い!」
容赦なく言い捨てられて、俺はまたため息をつく。
「腹を括って梓ちゃんに話せ。で、堂々と挑め。たとえ相手が元カノでも」
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