子望月

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それから程なくして季節は春に変わり、僕達は二年生になった。大貫はまた新たな合コンを計画しているらしい。無類の女好きだと公言し始めやがった。 小早川くんは、ココアちゃんと別れたらしい。噂だけれど、最後はかなり派手なケンカだったんだって。でも彼の机の周りは人でいっぱいだ。男女関係なく。人気者とはこういうもので、その上、僕の推しなんだからそれで当たり前だと思ってる。 僕はパソコンに向かって悲観的なことを書くことが少なくなった。以前のように一人で座って独りで泣くこともあまりない。その代わり、スマホから簡単な文をちょこちょこと投稿するようになった。今日あった少し良いこととか、コンビニスイーツの新作のこととか。……ご飯の写真とか。 その度に充電器に差しっぱなしにして忘れ去られている母のスマホがブーブー鳴るんだ。それを気づかないフリをして、僕は母の作った晩御飯を食べている。勿論、一枚撮ってから。 ―――ちなみに、ネコ男さんとは今も仲良しだ。どうやらここにも演じてる人がいたらしい、と今更ながらに気づいている。 [完]
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