さよならは 言わないで

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 死んだら人はまずどこへ行くのだろうか?  誰も知らないはずのその質問の答えを、彼らが見える俺は幼い頃から知っていた。  なぜかはさっぱりわからないが、彼らは俺を見つけると葬儀もそっちのけで、体の中に入ろうと押しかけてくる。  強引に俺の中に押し入って、最後は満足そうに去ってゆく彼らの大半は悪意のない善良な幽霊だ。  幸せそうな彼らの役に立っているのだと思えば、そう悪い気はしないのだが、体調の急激な悪化が避けられないのが難点だ。  時には猫や犬といった人間に慣れた動物たちまでやってくるから、俺はしょっちゅう体調を崩して倒れた。
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