さよならは 言わないで

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「ささ、みなさん美春についてきてくださいね。諒ちゃんにいっぺんに飛びかかっても、だあれも得しませんよ。諒ちゃんがみなさんの仲間入りなんてことになったら美春、こわーい鬼になっちゃいますからね」  美春は人差し指を2本頭にあてて、鬼の真似をしている。  その姿はあまりにも可愛く、世界一怖くない鬼だなと思い顔が緩んだ。  幸い美春には見られずにすんだようで、俺はそっと胸をなでおろした。  いつもは俺に一直線の幽霊御一行様が、なぜだか美春の言葉には逆らえないようで、素直に後ろをついてゆく。  先頭を歩く美春の足元には、いつの間にかミハルもくっついて歩いていた。  そう言えばミハルはちょくちょくいなくなることがあったが、美春の所に通っていたのかもしれない。  昔一緒に見つけてこっそり二人で飼っていた猫だから、美春にも懐いているのは自然なことだが、いつもと違い俺の方には近づいて来ようともしない。
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