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寺の奥の広間まで案内された幽霊たちは、落ち着かない様子で次の美春の言葉を待っていた。
ついていくこともままならなかった俺は、ばあちゃんにひょいと台車に乗せられここまで運ばれてきた。
確かに俺が細身であることは認めるが、成長期も間もなく終わる男性を軽々持ち上げるばあちゃんには驚きを隠せない。
かなり小柄に見えるばあちゃんだが、長年幽霊と向き合ってきただけあって、体力も力もまだまだ衰えていないのだろう。
そうだとしても恐ろしいので、ばあちゃんを敵に回すのだけはやめておこうと心の中で誓った。
「あわてなくても、ちゃぁんとご案内しますから。まずは一人ずつこちらにご記名をお願いします。何だったら美春が代筆しますから、お名前を漢字で伝えていただくだけでも大丈夫ですよ」
美春は手際よく机を運んできて、用意していたノートを広げる。
どうやら葬儀用の芳名帳を使っているようだ。
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