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まだ使ってくれている、それだけでかなり幸せな気分になった。
かくいう俺もお返しにもらった猫柄の湯飲みを、何年も窓際に飾っている。
「あ、諒ちゃん気づきました? そうです。懐かしの諒ちゃんからもらった、初めての誕生日プレゼントです」
美春はその日以来、家で飲む飲み物はすべてこのティーカップだという。
この3年がまるでなかったかのように話しかけてくる美春は、もう何も覚えていないのかもしれない。
対して俺は急に話しかけられてもどう話せばいいのかわからず、餌をもらう前の鯉のごとく口をパクパクさせることしかできなかった。
結局美春にとってはあの出来事もたいしたことではなく、気にしているのは俺だけなのかと思うと気持ちが沈んでいった。
「愛する諒ちゃんがくれたものは、何もかも宝物なんです」
俺が落ち込んでいることに気づくこともなく、こともなげに愛するなんて言葉を使ってくるが、美春にとってはそれも軽いノリなのかもしれない。
聞いている俺の方が恥ずかしくなって、顔中に火照りを感じ下を向いた。
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