さよならは 言わないで

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 今朝地震だと思った出来事がこれだったに違いない。  地震速報が流れないことを不思議に思ったことを思い出した。  海老貫トンネルは近くの鉱山へ続く近道だ。  巻き込まれたのはおそらくそこの作業員たちなのだろう。  次々とテレビには安否不明者の名前が流れていく。  ちょうど速報が入りスタジオの映像に切り替わったが、火災が起こったようで生存者がいる可能性は絶望的になったとニュースは伝えていた。  テレビに見入っていた俺は、そのニュースを聞いて心がざわめいた。  遠くの背後に気配を感じた俺は、ぞわっと寒気がして我に返った。    その寒気が気のせいではないことを俺は知っている。  ましてや風邪を引いたとかそういうことでもない。
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